東京に住み始めた最初の夏、大阪出身の筆者は衝撃を受けました。 どこのスーパーを探しても、筆者が子どもの頃から慣れ親しんできた、黒蜜のタレがついたところてんが見当たらないのです。 かわりについているのは、三杯酢や黒酢。 どうやら日本各地には、様々なところてんのタレがあるようです。 ところてん専門店の代表に、各地の食べ方を聞きました。 どうやら黒蜜をかけ、和菓子の感覚で食べるのは、全国的に見ると圧倒的に少数派で、京都や大阪など関西にほぼ限られるようです。 一方、関東を中心に全国で多いのは酢じょうゆ(二杯酢)。他にも、黒酢や、三杯酢(酢にしょうゆ、みりんまたは砂糖を加えたもの)などが大半。 東京と大阪のスーパーやコンビニでそれぞれ、ところてんを探してみると、東京では三杯酢や黒酢のタレが中心で、黒蜜はなかなか探せません。 一方、大阪では、黒蜜は必ず置いてありますが、多くの店で三杯酢や黒酢の商品も同時に販売されていていました。 各地のところてんの食べ方をユーザーが投稿できるサイトです。 各都道府県にカーソルを合わせてクリックすると、その地域での食べ方についての投稿を見ることができまます。 同じ地域でも多種多様な食べ方があります。 東京など関東地方では「酢じょうゆにカラシ」「酢じょうゆに青のり」、大阪や京都では「黒蜜」、秋田や山形では「しょうゆ・酢じょうゆにおろし生姜」などの投稿が多いようです。 このほか、「砂糖を入れた酢味噌」「すまし汁に青しそと生姜汁」、さらに「カルピスの原液をかける」という食べ方も紹介されていました。 サイトを作った栗原商店の4代目・栗原康浩さんはBuzzFeedの取材に「うちはこういう食べ方してるよ、と気軽に投稿してもらえるサイトがあればと思い作りました」と語ります。 とこマップを作ったきっかけは、「各地域でどうやって食べているのか知りたい」という思いでした。 栗原商店は、2000年にインターネットでのところてん通販を始めました。 それまでは静岡県や周辺地域を中心に販売していたため、タレは酢じょうゆなどがメイン。 しかし、ネットを通じて全国に売るようになると、「うちの地域では、こういうタレで食べない」「うちはこうやって食べている」という声が寄せられ始めたといいます。 そこで、各地での食べ方を知るためにマップを作りました。 東京や大阪、京都、愛知など、各地での催事で販売することもあるため、その際には、それぞれの地域での食べ方に合わせたタレをつけた商品を売るといいます。 「京都駅の百貨店で催事をした時は、ほぼ黒蜜しか売れませんでした。大阪など関西では5割以上は黒蜜を持っていき、ほかの変わったタレも売ります。愛知は甘酢のタレをメインにします。その他の地域では、酢じょうゆをメインに持っていっています」 とこマップへの各地からの投稿で一番驚いたのは、東北の一部地域で、しょうがを乗せるおかずとしての食べ方や、宮城県の砂糖じょうゆ、高知県のだしだったといいます。 栗原さんいわく、ところてんの製造業者自体は「斜陽産業」。そんな中でも「各地域のタレなどの食べ方は『地域の味』として、各地域で失われず、食べ続けてほしい」と、思いを語ります。

江戸時代からすでに東西でタレに違い?

『事典 和菓子の世界』(中山圭子、岩波書店)では、江戸時代後期の風俗について記した『守貞漫稿』を参照し、江戸ではしょうゆ、京都や大阪では砂糖をかけていたと記されていることから、当時すでに東西で食べ方に違いがあったと説明しています。 また、「ほそ長イ水へきなこをかけて売り」(『柳籠裏』)と川柳に詠まれていることから、きなこも使われていたのだろうと分析しています。 ところてんに関しては、松尾芭蕉が「清滝の水汲みよせてところてん」、松尾芭蕉が「あさら井や小魚と遊ぶ心太」と句に詠んでいますが、どんなタレをかけて食べていたかの情報は少ないといいます。 食べ方の歴史に関しては、栗原さんはこう語ります。 「中国から伝わり、蜜をかけて高級な食べ物として京都で食べられたのが始まり。江戸時代になった頃からは庶民にも食べられるようになりました」 「元々は関西の方の甘い食べ方がメインだったところが、当時、砂糖は高く、酢じょうゆなどをかけて食べるようになって、それが広がったということです」 記事をツイートしたり、Facebookでシェアしたりして、あなたの地域の食べ方を教えてください💁‍♀️

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